2012年3月29日木曜日

Hillary Waugh, The Con Game (1968)

Hillary Waugh, The Con Game (詐欺ゲーム)(A Crime Club Selection, Doubleday & Company, 1968) は、Fred Fellows 署長とSid Wilks 刑事が主要な探偵役の police procedural (警察推理小説)です。写真は表紙で、骸骨の目と歯にはドルマーク。ただし殺害方法は射殺で撲殺ではありません。

このシリーズの舞台であるコネチカット州の小さな町ストックフォードで、1966年9月、保険代理業の夫とその異常に魅力的な妻が友人夫妻をだまして現金を出させ、合計60,000ドルを持って逃亡したとの訴えが警察に持ち込まれます。しかし、逃亡した夫婦は、家屋、家具、2台めの車などの財産のほか、順調な代理店業を放棄しており、詐欺を働いた者がなぜ得るものよりも多いものを残して逃亡したのかが最初の謎になります。

捜査が進むにつれ、加害者とされる夫婦と被害者夫妻は町の郊外に隣接した山林をそれぞれ所有する5組の夫婦であること、かれらはその山林近くに高速道路が建設されるという情報を得てその経路調査を行う未知の人物とその仲介者に賄賂を贈るためその金を出し合ったこと、5組の夫婦は過去に他の組み合わせで結婚していたことなどの事情がわかってきます。被害者とされる4組の夫婦のうち2人の夫は専門職で著述を行っており、他の2人の夫は成功したビジネスマンです。妻はすべて主婦です。なぜ使い道のない道具が物置にありそれが使われていたのかという疑問を手懸りにして、ある関係者の死体が発見されますが、その死体を埋めるために必要とされる以上に大きな穴がほられているのはなぜかがつぎの謎になります。

本書では、犯罪者の身元や犯罪の動機や手段をめぐる(表面の)謎が追跡されるとともに、上記のような一見些細な謎が追跡されてゆき、隠された真相があきらかになってゆきます。それとともに、物語のねらうものも違って見えてきます。その結果、読後に表題が複数の意味をもつことがわかるのは、他の作品と共通した趣向です("The Missing Man" "The End of the Party"など)。Fellows 署長の推理は(ミス・マープルのように、しかしやや違った仕方で)逸話を手段としており、本書でも健在です。

Waugh がその創設者の一人に数えられる警察小説というジャンルは、地味な刑事の地道な捜査を描く人情ものや群像劇のようなイメージをもたれていますが、Waugh の作品はやや違っており、組織的な活動による推理を描くものです。このため本書のように広範囲にわたる失踪捜査やビジネスライクな人間関係を背景とする組織的な発見手続を描くことが可能になっています。弁護士もこの組織的手続きの一員であり、本書でも面白い役割を担って末尾ちかくに登場します。

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