2011年2月24日木曜日

Hillary Waugh, Murder on Safari (1987)

Hillary Waugh, Murder on Safari (A Worldwide Mystery, 1989), 222p.

Hillary Waugh は1989年にアメリカ・ミステリ作家協会のGrand Master Award を受賞しました.Murder on Safari (1987) は、その2年前にDodd, Mead & Compay から出版されました.写真は、A Worldwide Mystery 1989 版です.

Murder on Safari は、ニューヨークからケニヤへの団体観光旅行で連続殺人が起きる話です.語り手は、ニューヨークの新聞記者で、探偵の一人は、ケニヤの国家警察官ルムンバ警部(Captain Lumumba)で、「左胸ポケットの上の一杯のメダルが腰まで垂れている」と描写され、第1の事件以降、予防もかねてツアーに同行します.愛国心と合理主義をあわせもつ印象的な登場人物の一人です.本書の時点は、1986年と想定されます(物語は、6月17日火曜日〜7月1日火曜日までの半月間)が、観光客の安全問題は当地では重要らしく、1996年からは"Protection of tourist’s life and property"を任務の第1項目とする、観光警察局(Tourism Police Unit)が発足しています.

わたしは、ミステリが社会構造の隙間というべきものの描写を通じて現実世界の推論のあり方について何かを述べるところにとくに興味があります.いうまでもなく旅行はミステリの背景によく利用されます.たしかジョイス・ポーターに『殺人つきパック旅行 The Package Included Murder 』というのがありました(これはソ連観光旅行)し、コリン・デクスターのモースにもあります(『消えた装身具』The Jewel That Was Ours ).本書でも、観光ツアーの社会構造が犯行とその推理による暴露に利用されますが、そのうち、(1) ホテルと滞在客の間の関係、(2) 観光旅行での夜の過ごし方(パーティなど)が印象に残りました.

本書では、典型的な被害者もうまく古典的に利用されています.また、被害者のビジネスマンが両手に腕時計をしていた理由(そして、なぜその腕時計の一つだけが持ち去られていたのか)という謎も印象的でした.

(ポーターやデクスターの原題等については、ミステリー・推理小説データベース Aga-Search によりました.)

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