2011年1月21日金曜日

Harvey Sacks "Some Technical Considerations of a Dirty Joke" 1978

本日のEMCAセミナーでは、表記の論文をとりあげました.

多くの示唆的な議論を含む論文です.一つの論点は、ルールに従うことの方法論的問題性(またこれと並行的に性的情報の問題が論じられています)です.この主題はジンメル的な感じもします.それはともかく、サックスは、ルールは教えられたり、他者の行為から推測されたりするものであることから出発します.サックスによれば、このように知られたルールは、しかし、抽象性ー実際の適用よりも広い適用可能性ーをもっており、このため、ルールに従うことによる(そのルール自体の、あるいは、別のルールの)違反が生じることになり、このことがルールに従う者にとっての特有の問題になるといいます.

とりわけサックスはこの問題を、ルールなどを通じて大人によって監督される子供が直面し対処することになる問題として、理解しています.この点で、この論文は、「子供たちの物語の分析可能性」論文 (1972) や「ホットロッダー」論文と共通するテーマをもっています.それは普通「社会化」と呼ばれる問題ですが、サックスは、エスノメソドロジーの一分野といえる、人々の認識方法論の問題としてーたとえば、教示されたルールが教示者(親)のかぎりのものなのか、より一般的なものなのかをいかにして知るかという問題としてーとらえます.物語やその一類型としてのジョークは、自然的状況における経験をパッケージするものであるとみなされるので、そのようなものとして、情報(法や倫理を当然に含む)の独特の伝達装置となっていることから、物語の分析がここに関係してきます.こうした問題設定は、Moerman、Pomerantzらの教材あるいは、ルールの検証可能性にかかわるWiederの議論を思い出させるもので、それらとの連続性が強く感じられます.

サックスの講義録では、1971年秋にこうした問題が集中的に取り上げられています(本教材も、そのうちの4回の講義から再構成されたものとされています)

写真:六甲山の夕焼け.

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